「鉄学」概論
- 作者: 原武史
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/01/01
- メディア: 文庫
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有名な一節「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う」も当然のように引用されている。『阿房列車』では、この一節を読んで一気に虜になってしまった。
本書は、鉄道を愛した文学の巨人、鉄道に乗る天皇、私鉄沿線の歴史など、鉄道を媒介に時代を俯瞰している本だ。特に興味があったのは、第3章の「鉄道に乗る天皇」。明治、大正、昭和前期という時代、全国の鉄道に最もよく乗った人物の一人として、天皇がいるという。天皇、皇太子の全国レベルでの行幸啓は国家的戦略に基づき、彼らの姿を視覚的に意識させることを通して、人々に「臣民」であることを実感させていたようだ。
内容もさることながら、豊富な写真と地図も読み手を引きつける作りになっており、鉄道に関して詳しくない人でも楽しんで読める本。