趣味は何ですか?

趣味は何ですか? (角川文庫)

趣味は何ですか? (角川文庫)

「趣味は何ですか?」と聞かれるといつも答えるのに躊躇してしまう。こんな経験は誰にでもあるのではないだろうか。ボクもそうだ。「何か1つにまとめなきゃ」、「できるだけかっこいい趣味を」、「人とは違う趣味に」とかあれこれ考えつつも、毎回異なる趣味を答えてしまっていたりする。ボクの場合、結局質問をした相手に合わせた回答をしていることが多い。

おそらく答えにくいのは、ある1つの決まりきった趣味がないというのが問題なのだろう。基本的に、広く浅くの趣味が多いので、1つのことに突き詰めてやったことがないとも言える。ちなみに、「突き詰めて」というのは、ボクの中ではその趣味については他の誰にも負けないほどの愛情と熱中度を持っていることを指す。こんなの、ほとんどの人が持ってないのでは?とも思っている。

著者も、とある講演会で「ご趣味は何ですか?」と聞かれ、答えに窮したという。「ないような気がします」と答えると会場が静まり返った。そこから、「趣味」というものに興味を抱いた著者は、「趣味は何ですか?」と誰かれかまわず聞くようになって行く。「航空無線」、「八十八カ所巡り」、「登山」などさまざまな趣味を持つ人の話を聞き、著者自身も挑戦してみるのだが、ことごとく失敗してしまう。趣味を持つ人それぞれの個性が著者の独特の語り口によって、描かれている。とにかく、全章で笑ってしまう。

第二章「マニアの苦悩」では、「航空無線」を傍受している人が登場する。この方は、「マニアは、人がやっていることは嫌い。流行ったら終わり。ただし、あまりに人がやっていないものは共感相手がいないので厳しい。」と言う。要は、あまり人がやっていない内容が良いが、趣味に関する友達はほしいということらしい。そして、平然とやっていることを「つまらない」とも言っている。

あまり他人がやっていないことで、ちょっとだけわかり合える人がいる趣味。こういうのは共感できる。ただし、「つまらない」のに続けるのはなぜだろうか。時間つぶしなのだろうか?それとも少しずつ上達していく過程を楽しんでいるのか?

うーん、本書を読んでいると「趣味」というのがよくわからなくなってきた。

wikipediaには、「人間が自由時間(生理的必要時間と労働時間を除いた時間、余暇)に、好んで習慣的に繰り返しおこなう行為、事柄やその対象のこと。道楽ないしホビー(英: hobby)」とある。

好んで習慣的にやっている趣味を持つ人はいるのだろうか?ボクが「趣味は何ですか?」と聞かれたときの候補に挙げているものには「読書」、「音楽」、「椅子」、「歌舞伎」、「仏像」などがある。これらを考えた場合、何か目的を持ってやっている気がする。全部に対して、「生きる」上での知識・体験を肉付けしていくようなものと捉えている。だから、いろいろなことに興味を持ったりする。したがって、「突き詰めて」というよりも、「広く浅く」を選択しているのかもしれない。うーん、なんだか哲学的になってきたが、ボクの中での趣味は「自分の生き方をプラスに補完してくれるより良いもの」みたいな感じ。

さまざまな趣味に挑んでは失敗している著者が、最後に辿り着く境地ははたして?こちらは本書でご確認いただきたい。


著者の郄橋秀美さんは最も好きなノンフィクション作家の一人である。『やせれば美人』や『ご先祖様はどちら様』、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』など名著が多い。特に『ご先祖様はどちら様』はおすすめ。書評はこちら

やせれば美人 (新潮文庫)

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ご先祖様はどちら様

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「弱くても勝てます」―開成高校野球部のセオリー

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