ルリボシカミキリの青

もちろん『生物と無生物のあいだ』は読んだし、それ以後出版されている著者の本もチェックはしていた。ただ、ずっと読まず嫌いだった。有名になりすぎた著者なので、何か読む気になれなかった。

動的平衡』など有名な本を出版されている中でも、本書がハードカバーで出版されたときは一番気になった。それほど青色に黒い斑点のルリボシカミキリが表紙を飾った装丁は印象強い。ちなみに『動的平衡』は読んでいない。なかなか手が出ない中で、本書が文庫になっていたのを見て慌てて飛びついた。

生物と無生物のあいだ』を読んだときは、正直衝撃を受けた。自分自身が文系出身ということもあって、それまで理系の本はあまり読まなかった。理系の本は、文章が固く、すらすら頭の中に入ってこないことが多かった。そんな印象を『生物と無生物のあいだ』は取っ払ってくれた。「ユーモラス」そんな言葉がぴったりな文章。

本書も、このユーモラスな文章はまったく変わっていない。さらに内容が科学エッセイということもあって、そちらも後押ししてくれる。

随所で福岡ハカセの頭の中を垣間見ることができて楽しいのであるが、
ハイライトは、
・第2章「ハカセはいかにつくられたのか」
・第3章「ハカセをいかに育てるか」
だ。

そして全体を通してのキーワードは「センス・オブ・ワンダー」これに尽きる。

福岡ハカセが本書を通して言いたいのも、人生でいかに「センス・オブ・ワンダー」の瞬間に出会えるかだと感じた。少なくともこれが福岡ハカセを形成したものであると。

子どもの頃にこういった本に出会えていたら、間違いなく理系に進んでいただろうな。

最後に、9月17日まで東京都美術館で開催されていたフェルメール真珠の耳飾りの少女」特別展にちなんで、本書から小ネタを一つ。

フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が巻いているターバンの青。このつややかな青は、細かく砕いた宝石で描かれているから、350年経った今でも色あせていないそうな。この宝石は、当時高価で希少なものとされたラピスラズリというものだったようだ。


ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

同じく科学エッセイの筆頭と言えば、これに並ぶものはない本。もはや、これはもう有名ですね。